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「いや~すみませんおばさん、急に来たのに飯食わせてもらって。これホント美味いっすね。お、ナオトそれ食わねーんなら俺にくれよ」 「あ・・・ああ、やるよ」 「もらいっ。あ~うめ~な~。まさに日本の味、お袋の味だよな。俺の母ちゃん料理しないから、頼んでも全然作ってくれなくてよ。日本のコンビニ弁当も美味いが、やっぱ手作りは最高だな!」 「って食べ過ぎよ玉城!ちょっとは遠慮しなさいよね!!」 目の前で美味しそうに母の食事を食べているのは玉城。一人だけ戻ってきた玉城は神妙な顔をして「ナオト、扇には協力しないでくれ。ゼロを・・・ルルーシュを人質になんてしないでくれ。頼む」と、玄関で土下座をしたのだ。まさに額を地面にこすりつけての本気の土下座に、とりあえず上がれと部屋に通し、理由を聞く事になった。 「ゼロは親友だった。その親友を信じす、俺はアイツを裏切った。俺があの時もっとアイツを信じればよかったんだ。扇の言葉に惑わされて、アイツを疑い裏切っちまった。アイツを追い詰めてあんな・・・・!アイツは悪くないんだ。頼む、アイツは、ゼロは本当はいいやつなんだ。悪逆皇帝なんてできるやつじゃないんだ。アイツだけが、本当の正義の味方だったんだ」 今にも泣きそうなほど顔を歪ませた玉城は、再び土下座をした。そして再び「頼む。扇の協力しないでくれ!」といったのだ。 ナオトはまだ玉城とこの時代出会ってはいない。だから玉城の性格などわからない。これが嘘か本当か判断する基準がないのだ。だからどう答えるべきか迷いながら私を見たので、私は腕を組み、深い深い溜息を吐いた。 「玉城、もういいわよ。アンタの頭で私達を騙そうとか、裏で何かをとか、そういうの無理だものね」 私のその言葉に玉城は「へっ?」と、マヌケな声を出し、顔を上げた。 「黒の騎士団抜けた後、首相になるっていう扇さんに誘われて断ったのアンタだけだものね。信じるわよ」 「カ、カレン!?お前もしかして!?」 玉城は胸を張るように立つカレンを指さしながら「え?え?マジで?」と行った後、驚き目を見開いていた顔を満面の笑みに変えた。 「ほんとかよ!覚えてんのか!?」 「お兄ちゃんはホントに覚えてないわよ。でも私はちゃんと記憶があるわ。私は黒の騎士団零番隊隊長紅月カレン。それが私。玉城、絶対に扇さんに言っちゃ駄目よ。私に記憶があるって理解ったら、扇さん私に何させるかわからないもの」 黒の騎士団で最高位の武力を持っていたカレンだ。KMFの技術だけではなく身体能力でもカレンに勝てるものはほぼいなかった。将来それだけの力を得るのだからと、幼いカレンに無茶をさせることは十分考えられた。 何より、騎士団の中ではC.C.の次に彼の傍にいたカレンをルルーシュを釣るための餌にしかねない。 「喋らねーよ。今扇は何するかわからないからな。首相になってからアイツは変わった。・・・いや、その前から、あの斑鳩の時に変わったのかもな。何でもかんでもゼロが悪い、ギアスが悪いだ。俺達があんなことをしてアイツを追い詰めたから、ゼロが使えなくなったから、自分の命使ってあんなことしちまったのにさ。俺は後悔したんだ、あいつを信じられなかった事をよ。でも扇は自分のミスまで全部アイツに背負わせるから、俺は腹が立ってさ。文句言ったことあるんだよ。それはお前のミスで、ゼロは関係ないだろって。でも扇は俺の話なんて全然聞かなくて、俺がそんなことを言うのは、もしかしてギアスで操られているからじゃないかって、変な目で見てきてよ」 ああ、こりゃ何言っても駄目だなって。 相手は首相だから殴るわけにもいかず、此処1年ほど疎遠になっていたという。 ぽりぽりと沢庵を噛みながら玉城はそう呟くと、ごちそうさまと食事を終えた。 「玉城はどうしたいんだ?」 ナオトはカレンに尋ねた時のように、玉城にも今後どうしたいのかを尋ねた。 「俺か?そうだな、ゼロを扇に見つけられたら困るから、先に見つけてどこかに避難させたいとは思う。だってあいつの妹、足悪いだろ?見つかったらアウトだからな。あと、ナオトたちも出来ればどこかに隠れて欲しい」 今日は一先ず引き上げたが、また扇達が来ることはわかりきっている。 巻き込まれる前に姿を消すのが一番なのだが。 「そういっても、俺達にも生活はあるし、これから戦争になるんだろ?」 今日明日にでも戦争が起きると言う話ではなく、まだ開戦まで時間がある。 その間隠れて暮らせるほどの貯蓄はない。 「そこなんだよなー。戦争になるって解ってるし、先のことも解ってるんだからよ、コレをなんか利用できねーのかなぁ」 「利用って、未来の記憶を頼りに戦争を回避するとか?」 カレンはオレンジジュースを口にしながらそう尋ねた。 「回避なんて出来ねーだろ?ゼロを人質にしてもたぶん無理だぜ?」 「当たり前じゃない」 「多分じゃなくて、絶対無理だ」 ナオトとカレンに断言され、やっぱそうだよなと玉城はホッとした顔で頷いた。 「扇に無理だって言っても聞いてくれなくてよ。南たちも最初は無理って思ってたはずなのに、気づいたら絶対大丈夫だ。俺達は黒の騎士団だ、数多くの奇跡を起こしたんだから俺達ならやれる。いや、俺たちは正義の味方なんだから俺たちがやるんだって言い始めてさ。馬鹿だよなあいつら。黒の騎士団の作戦考えてたのゼロじゃん。俺らの頭じゃ無理なんだよ」 ナオトとカレンは理解ってくれるんだな。 ようやく理解してくれる人がいたと、玉城はほっとした表情を浮かべた。 「ルルーシュの頭の良さは嫌なぐらい知ってるわよ。あいつはね、前に銀行強盗に私が銃を向けられた時も話術だけで私を助け出したわよ。銃口を自分に向けさせ、会話で相手を翻弄し、意識を自分に集中させた。その隙をついてスザクがその場を制圧したの。武器一つ持たず、撃たれたら死ぬような場面、どんなに不利でもあきらめないで当たり前のような顔で情況をひっくり返すやつなの」 まだブラックリベリオンが起こるずっと前、生徒会のメンバーで行った銀行での事件を思い出す。そう、あの時も平然な顔をして、自分の身を危険にさらしても私を助けだしてくれた。自分が動き、私を救うのがあたりまえだという顔で。 「へ?武器なしで銃相手に?」 「そうよ。犯人は複数人。人質の私は捕まって銃突きつけられてたの」 しかも頭にね。 「な!?カレン、怪我はしなかったのか!?」 「かすり傷もないわよ。ルルーシュのお陰でね」 「やっぱすげーな俺の親友はよ!」 玉城は嬉しそうにウンウンとうなづきながら、出された炭酸飲料を口にし、そして。 「あーあ、カグヤ様と連絡とれりゃ話が早いのによ」 相手は天皇家だからカグヤ様に記憶があればルルーシュも保護してもらえるだろ? 玉城が何気なく行ったその言葉に、私は「それよ玉城!」と、声を上げた。 |